【色彩検定3級】色の見え方の変化

色彩検定3級

私たちの日常には色があふれています。

景色や物の色などは、単色ではなく別の色同士が隣り合ったり前面後面のように色が前後していたりと、様々な色の組み合わせで構成されています。

こういった別の色同士が隣接している場合などでは、本来の色とは違った見え方になります。

例えば、「2:R」(赤色)でも背景に暗い色を敷いた状態で見ると、本来より明るく見えます。

今回はこのような色の見え方の変化を学習していきます。

対比による色の見え方

異なる色同士が互いに影響を与え合い、色の見え方が変わる現象を色の対比と言います。

色の対比には、同時対比(どうじたいひ)継時対比(けいじたいひ)があります。

同時対比や継時対比とはどういった現象なのかを詳しく解説していきます。

同時対比

隣接する色が互いに影響し合い、お互いの色の見え方が本来の色より変化して見える現象を同時対比と言います。(図.1)

同時とは「隣接している時」や「近い距離にある色」などの同じ空間内に存在しているということを指しています。

継時対比

ある色を見る時に、直前に見た別の色によって見え方が変化する現象を継時対比と言います。(図.2)

図.2の場合、黒色を見た後に灰色を見ると直前に見た黒色が影響して、その分灰色は明るく見えます。

反対に白色を見た後に灰色を見ると直前に見た白色が影響して、その分灰色は暗く見えます。

同時対比と違い継時対比は、同じ空間に色が存在していない時に起こる現象です。

ハト教授

以前学習した補色残像も継時対比の一種だよ!

対比の種類

色の対比は「明度対比」「色相対比」「彩度対比」の三つに分けることができます。

これらはどの属性が最も変化して見えるかによって分けられています。

ハト教授

補足として、対比が複数同時に起こる場合もあるけど、一番変化して見える属性を基準にどの対比なのかが決まるよ!

例えば先ほどの図を見てみると、図.1ではお互いの色がより際立って見えることから「彩度対比」、図.2では後に見た灰色が明るく見えたり暗く見えたりすることから「明度対比」ということが言えます。

ではそれぞれの対比を詳しく解説していきます。

と、その前に図と地の関係というものを知っておきましょう。

図と地の関係とは

デザインや絵、写真などで使われている視覚的な表現で、とはメインとなるものを指し、とはその背景となるものを指します。(図.3)

この図と地の関係を使ってそれぞれの対比について解説していきます。

明度対比とは

異なる明度の色同士があるときに、その色同士の明度差がより大きく感じられる現象を明度対比と言います。

文章だけだとなかなか分かりづらいので、図を見ながら理解していきましょう。(図.4)

図.4の「図」となる灰色は両方とも同じ色なのです。

しかし両者を見比べると、黒背景の灰色の方が明るく見えるかと思います。

そして白背景の灰色は暗く見えるかと思います。

このように地となる背景色と図となる対象物の色の明度差によって起こる錯覚を明度対比と言います。

図.4では無彩色同士で表しましたが、「無彩色と有彩色」「有彩色と有彩色」同士でも明度差があれば同様の明度対比が起こります。

ハト教授

明度対比は日常の中でも様々なところで活用されているよ!

例えば、標識デザインであったりインテリアやファッション、建築物の手すりなどの安全対策、食材や料理の盛り付け方のような飲食などでも活用されているよ!(図.5)

色彩と聞くと「web系」や「装飾系」などで活用されているイメージだと思うけど、建築関係や飲食関係などでも幅広く活用されているよ。

色彩検定を学習することで様々な場面で役立てるから、色彩学を学ぶことはとっても有意義だと思うよ!

彩度対比とは

異なる彩度の色同士があるときに、その色同士の彩度差がより大きく感じられる現象を彩度対比と言います。(図.7)

こちらも図を見ながら解説していきます。

図.6の図となる緑(sf12)は両方とも同じ色です。

こちらも見てみるとdk12が背景の緑色の方が鮮やかに見えると思います。

そしてv12が背景の緑色はくすんで見えるかと思います。

これらも明度対比同様、地となる背景色と図となる対象物の色の彩度差によって起こる錯覚を彩度対比と言います。

ハト教授

彩度の変化と共に明度も明るく、もしくは暗く見えてもいます。

でも初めに解説した通り、変化量の多い属性を基準にしているので図.6の場合は彩度対比になるよ!

彩度対比も日常の様々なところで活用されているよ!(図.7)

色相対比とは

異なる色相の色同士があるときに、その色同士の色相差がより大きく感じられる現象を色相対比と言います。(図.8)

明度対比は明度が、彩度対比は彩度が変化して見えるように、色相対比は「色相」が変化して見えます。

この色相の変化の特徴として、背景色と対象物の色を色相環上で見た時に、対象物の色は背景色となる色の補色の方向に色相が変化して見えます。

こちらも図を見ながら解説していきます。

図.8の図となるだいだい(v5)は両方とも同じ色です。

v4が背景色の場合、v5は黄みがかって見えます。
背景色であるv4の心理補色はv16の緑みの青なので、色相対比の特性上v16の方向に色相がずれて見えるので、v5は黄みがかって見えるようになります。

同じように背景色がv8の場合は、心理補色であるv20の青紫の方向に色相がずれて見えるので、v5は赤みがかって見えます。

ハト教授

図.8のように背景色の上に図がある場合は、図と地の面積比が大きくなるほど対比効果も強くなるよ!

補色対比とは

図と地の関係になるように2色の異なる色を配置したときに、この2色が補色の関係となっている場合、図となる対象物の色は鮮やかに見えます。(図.9)

この現象を補色対比(ほしょくたいひ)または補色による彩度対比と言います。

ハト教授

補色による彩度対比は、お互いが補色の関係にあるからくすんで見えることはなく鮮やかに見えるよ!

さっき学習した彩度対比は対象物の色は鮮やかに見えたり、くすんで見えたり配色状況によって色の見え方は異なるね!

こういった違いをしっかり理解しておこうね。

図.10は補色関係にある鮮やかな2色同士を組み合わせた図になります。

これも先ほど同様、補色対比となります。

図.10のようにお互いが補色関係でありかつ鮮やかな色の時には、2色共により鮮やかに見えることによって色の境界線があいまいになり、色の明度や彩度をご認識してしまう場合があります。

このような現象をハレーションと言います。

ハト教授

ハレーションについて、公式テキストでは「色の境界がぎらぎらとして」と表現しているよ。

「ぎらぎら」だったり「あいまい」だったり表現の仕方はいろいろあるけど、要は色の境界線が分かりにくくなるってことを言っているんだ!

色陰現象について

物体に光を当てると灰色の影ができます。

この時2色の異なる色の光を物体にあてた場合、できる影の色は灰色とは少し異なる色となります。

その際の影の色は、あてた照明(光源)の色の反対色の色みを帯びて見えます。

これを色陰現象(しきいんげんしょう)と言います。

このような現象から、図.11のように鮮やかな有彩色に囲まれたグレイはその有彩色の心理補色となる色みを帯びてみえるようになります。

鮮やかな赤に囲まれたグレイだと、赤の心理補色となる青緑みを帯びて見えます。

ほかの色も同様に、黄だと青紫みを帯びて、緑だと赤みを帯びて、青だと黄みを帯びて見えます。

ハト教授

公式テキストでは色陰現象は「有彩色に囲まれたグレイはその色の心理補色の色みを帯びて見える」という解説なのでここを覚えておこう。

ですが図.11を見てもなかなか色陰現象が起こっているのか分かりづらいと思います。

なのでもっと分かりやすく解説していきます。(図.11-2)

図.11-2の青に囲まれているグレイと同じグレイは①~③のどれだと思いますか?

おそらく②が同じグレイに見えているかと思います。

ですが青に囲まれているグレイと同じ色は①・③です。

そして②はグレイに少しだけ黄みを混ぜています。

これで色陰現象を体験できたのではないでしょうか。

青に囲まれたグレイは青の心理補色である黄みを帯びて見えます。

よって②の少しだけ黄を混ぜたグレイと同じに見えたのです。

ハト教授

こういった対比や錯覚は分かりやすい例を見ることで、理解しやすいから分かりにくい対比などがあれば実際に調べてみるのもいい勉強になるよ!

縁辺対比について

異なる色同士が隣接している時に、その境界線付近で起こる対比現象を縁辺対比(えんぺんたいひ)と言います。(図.12)

ここで重要なのが、「境界付近で起こる対比現象」というところで、これまで明度対比や色相対比などの対比現象を解説してきましたが、それらは色全体が変化して見えていました。

しかし縁辺対比は、漢字を見てもらうと分かる通り「辺」の「縁(フチ)」で起こる対比です。

縁辺対比は色相、明度、彩度いずれの対比でも起こります。

では図.12を見ながら詳しく解説していきましょう。

図.12ではグラデーションになるようにグレイと赤を並べています。

縁辺対比はグラデーションの場合、その現象が顕著に表れます。

並びあっている図形の境界線に注目してみてみましょう。

グレイの場合、境界線では明るいグレイと暗いグレイが並びあっています。

明るい方のグレイは隣接している暗いグレイと明度対比が起き、より明るく見えます。

反対に暗いグレイは明るいグレイとの明度対比によりさらに暗く見えます。

同様に赤のグラデーションの場合、並びあっている境界線では彩度が高い赤と低い赤が並んでいます。
(高彩度、低彩度という意味ではなく、あくまで隣接している色を比べて彩度が高い低いということ)

こちらも彩度が高い赤は、彩度が低い赤による彩度対比によってより鮮やかに見えます。

反対に彩度が低い赤は、彩度が高い赤の影響でより彩度が低く見えます。

こうして境界線はより強調されて見えるようになります。

練習問題

最後にまとめ問題です。

それぞれの問いに答えてみましょう。
また( )に入る言葉を答えましょう。

答えは問題文をタッチすると表示されます。

異なる色同士が互いに影響を与え合い、色の見え方が変わる現象を(➀)と言います。
【答え】➀色の対比
隣接する色が互いに影響し合い、お互いの色の見え方が本来の色より変化して見える現象を(➀)と言います。またある色を見る時に、直前に見た別の色によって見え方が変化する現象を(➁)と言います。
【答え】➀同時対比 ➁継時対比
デザインや絵、写真などで使われている視覚的な表現で、(➀)とはメインとなるものを指し、(➁)とはその背景となるものを指します。
【答え】➀図 ➁地
明度対比の説明として正しいのは次のa~dのうちどれですか。
a.同じ明度の色同士があるときにその色同士の明度差がより大きく感じられる現象
b.同じ明度の色同士があるときにその色同士の明度差がより小さく感じられる現象
c.異なる明度の色同士があるときにその色同士の明度差がより大きく感じられる現象
d.異なる明度の色同士があるときにその色同士の明度差がより小さく感じられる現象
【答え】c
次のa~dのうち彩度対比が起こる組み合わせはどれですか。すべて選んでください。
a.v18・v6
b.dp8・p2
c.Gy-8.5・Gy-3.5
d.b2・d2
【答え】b,d
色相対比の特徴として、変化する色相は背景色と対象物の色を(➀)で見た時に、対象物の色は背景色となる色の(➁)の方向に色相が変化して見えます。
【答え】➀色相環上 ➁補色
地にv8を配置した時に、次のa~dの内➀どれを図に配置することで補色対比を見ることができますか。また➁ハレーションが起こるのはa~dの内どれですか。
a.sf20
b.d18
c.b8
d.v20
【答え】➀a ➁d
有彩色に囲まれたグレイはその色の心理補色の色みを帯びて見えます。この現象を何と言いますか。
【答え】色陰現象
異なる色同士が隣接している時、その境界線付近で起こる対比現象を(➀)と言います。(➀)は(➁)の場合に顕著に表れます。
【答え】➀縁辺対比 ➁グラデーション

お疲れ様でした。

練習問題は全問正解できましたか?

間違えた個所があればもう一度復習してみましょう!

お疲れさまでした。

今回は色の見え方の変化について学習しました。

今回学習した明度対比や彩度対比などの「対比」は、日常生活の中で様々な所で活用されています。

日々の生活の中で意識して周囲を観察し「対比」を探してみましょう。

そうすることでただ覚えるだけではなく、実際に使えるスキルとして身に付きます。

ファッションやインテリアはもちろん、写真撮影や果てはプレゼンテーションで使う資料にまで活用することができますので、これからもどんどん色彩のことを学んでいきましょう!